ラヴェッロ再訪

翌朝は、雨も上がったが天気は冴えないままだ。ナポリの宿は明日の晩から2泊の予約なので、今日の宿を決めなければならない。サレルノの近くまで行くことも考えたが、とりあえずまだ決めずに、昨年訪れたラヴェッロに行くことにした。チェックアウトを済まして、バスを待つ。予約なしの飛び込みで安めの部屋を選んだ為もあって、何だかうらぶれた感じの一晩になったが、ホテルの人々はみな親切だったし、最後には気持ちの良い思いを残した。バスはほんの3ストップ程でアマルフィに到着。ここでラヴェッロ行きのバスに乗り換えた。隣町まで国道を走り、そこから山道となる。細く曲がりくねった道を上って行き、20分ほどでラヴェッロに到

町の中には大きな車は入れず、ここから歩いてトンネルをくぐると町の広場に出る。出来れば今晩はこの町に泊まりたいと思う。ヴィラ・チンブローネとパルンボは50万リラは固い高級ホテルであり、予算内に抑えようとするとヴィラ・マリアかホテル・ルフォロとなる。眺望をとってホテル・ルフォロにトライすると、部屋も確保できた。ワーグナーゆかりのヴィラ・ルフォロの庭園を臨むこともでき、そこから海まで素晴らしい眺望の場所にあった。案内された部屋はあいにく山側だったが、料金はリーズナブルだった。更に驚いたことに、そのホテルは、銘板に拠れば1926年から27年まで、D.H.ロレンスが投宿したところで、我々が泊まった突き当たりの25号室が、まさに、かつてロレンスの部屋だったのだ。彼はこの部屋に泊まり「チャタレイ夫人の恋人」を執筆した、とその部屋の窓の下の銘板に記されていた。カプリのレーニンの宿といい、このホテルといい、思いもかけず有名人ゆかりのホテルに泊まることになった

しかし、空は相変わらずの曇天で、窓の外には薄い霧も立ちこめている。これでは有名な二つのヴィラからの眺めも望むべくもない。今日の所はゆっくり町を散策することにした。ホテルを出て土産物屋に入ると、威勢のいいおばさんが店をきりもりしている。調味料入れや食器など確かに欲しくなるようなものもあったが、またホテルに戻るのも面倒なので、後で来るからと言って店を出た。広場の近くのカフェで軽く昼食をとる。食後に先ほどの土産物屋を訪れると、おばさんの息子が店番をしていて、マンマは食事に行っていると言う。夕方また来ることにしよう。別の土産物屋ではレモンチェッロやレモンチェロを飲むための小さな杯などを買った。最後におばさんの待つ土産屋を訪れ、食器などを買うことにする。妻は羊の絵が描かれた楕円形の皿を気に入ったようで、手にとって眺めていると、おばさんがちょっと貸してみろと取り上げ、レジのテーブルにガンガンと何度も力一杯叩きつけた。ほら、見ろ、この皿は丈夫で、オーブンでもレンジでも大丈夫なんだ。落としても割れない、と強烈なデモンストレーションをしてくれた。おばさんの迫力でずいぶんいろいろ買い込んでホテルに戻る

夕方は時折小雨の降る中を再び少し散歩した後、ホテルでの食事とした。ルフォロ荘の庭からアマルフィ海岸まで見下ろす素晴らしい眺望のレストランだ。まだ外は明るく、食事の時間としては早めに訪れた我々を窓際の特等席に案内してくれた。さすがにこのような場所だとそれなりに高額になるが、調度品含めて良質の料理だった。そして、食事をとっていると、だんだん霧が晴れて下界のアマルフィの海岸線が姿を見せ始めた。天気は快方に向かっているようだった