カプリ島4日目

ヴィラ・クルップでは食堂はないものの朝食は付いている。飲み物とパンだけなので設備が無くても大丈夫なのだ。明るい広間でカフェ・ラッテを飲みながら、ゆっくりと朝食をとる。今日はカンノーネの見晴台に行くことにした。ホテルの裏側の山の上にあたるが、道はカプリの町からしか無く、まずウンベルト1世広場を通って小さな路地に入る。石のアーケードが続くマドレ・セラフィナ通りを進む。やがて町を外れて登り道が続き、15分ほどで見晴台となる。海面からはホテルまでの更に倍くらいの高さがありそうで、はるか眼下にクルップ通りの先が海岸まで続いているのが見える。ごつごつと岩肌をむき出した断崖がソラーロ山まで、カプリ全体が大きな岩山であることがわかる。ここまで訪れる人は少なく、見晴台を離れようとする頃に別のカップルがやって来た。写真を撮ってもらい、カンノーネを後にした。

昼ご飯は、アシェット社のGUIDE DU ROUTARDに出ていた La Savardina da Eduardo でとることにした。ティベリオ山への途中にあるので、町からは20分ほど歩く。ブドウ園やレモン園が広がる良い環境の中に見つけたレストランは全体が果樹園のようで、殆どの人はテラス席で食事をしていた。テラスと言っても屋根のように木の蔦を配置しているので全ての席が気持ちよい木陰となり、最高の環境だ。我々の席は端の方だったので、すぐそばからレモン園が広がっていた。料理は全て新鮮で、何の衒いも無いがまっとうにおいしい。黄色の中に緑の葉が揺れているように無数に実るレモンの木々をすぐそこに見ながら、木漏れ日を浴びて食べる昼食は最高のひとときだった。

帰りがけに小さな種屋さんがあったので、トマトの種を買う。イタリアの細長いトマトだ。午後はアナカプリの方へ行ってみた。カプリからは小さなバスが出ている。断崖の上の道をゆっくり進むので眺めは素晴らしいが、道が細く突然対向車が現れるとヒヤリとさせられる。ナポリのように荒い運転でないのが救いだ。あの運転はナポリだけのようで、カンパーニア地方でも他の町はまともである。もちろんイタリア・レヴェルでの「まとも」ではあるけれど。アナカプリは人も少なく、あまりぱっとしなかった。リゾート・ホテルのヨーロッパ・パレスの前は大きな土産屋だった。劇場の舞台装置のようなカプリの町と比べると新興住宅地のようで情緒が無いことおびただしい。更にお目当てソラーロ山へリフトがシーズン・オフで停止中ということで、そそくさと帰りのバスに乗り込んだ。

ホテルに戻ると、連れ合いが体の不調を訴える。風邪をひいたようだ。昨日、海水を浴びて冷えたのだろうか。夕食は、昼の成功に気をよくして再び GUIDE DU ROUTARD にあたり、カプリで取り上げられているもう一つのレストラン、SATTANI でとることにした。こちらはウンベルト1世広場から数十メートルの町中にあった。すると、またギド・ルータール大当たりで、アンティパストから最高に美味しい。カプリ最後の夕食なので、DOCカプリの中でも高い方のワインを頼む。酸味のバランスが穏やかになったくらいで、それ程大きな違いはなさそうだった。サービスもテキパキする中で気さくな感じで気持ちよい。食後のエスプレッソを飲むときに給仕に写真を撮ってもらった。壁には、オーソン・ウェルズ、サルトル、グレース・ケリーたちがこのレストランで食事をしたときの写真が飾られていた。

GUIDE DU ROUTARD は、フランスの「地球の歩き方」のようなものだが、説明が具体的かつプラクティカルでここまで役に立つとは知らなかった。フランス国内の巻も各種出ている。ホテルやレストランの選び方については、フランス人にも評価が高いようだ。もともとが若者向けと言えるので、一定の予算の中で、最高のパフォーマンスを提供するところを選んでおり、安かろう悪かろうではない。特にイタリアのようにミシュランが効力を発揮しないところでは力強い味方だ。

十分に満足してホテルに戻り、カプリ最後の夜を過ごした