トスカナ・ウンブリア篇
南イタリア篇
ナポリ再び篇
帰国の日が迫ってきた。最後に休みを取ってナポリをじっくり訪れることにした。パリからナポリまでは直行便もあるので2時間半で一気に、この泣く子も黙る混乱と猥雑と活力の町に降り立つ。まずはタクシーに乗ってボッタクリ度を確認。しかし、空港からタンジェンツィアーレをぐるりと遠回りしたことを除けば、メーターの倍額をふっかけることもなくまあ良心的。遠回りも、町中を走る恐怖を味合わせない為と心得れば全く問題は無かった。今回は、ナポリ市内の一泊と、カプリ島での二泊まで予約を入れていた。
最初のホテルは、昨年と同じブリタニックだ。角部屋でこそなかったが、上の方のミニ・スィートだったのでまあ満足。しかし、スィートといってもベッドルームでない方は狭く細長い部屋にソファーが置いてあるだけの、病院の中待合室みたいな雰囲気でどう使ったらいいかわからない。サンタルチア港からベスビオ山まで見渡すベランダからナポリの光景をしばらく堪能し、早速町に出ることにする。夕食まではたっぷり時間があったので中心部の方へ歩いていった。サン・カルロ歌劇場の前を通ると、丁度我々が滞在する期間にドニゼッティのオペラを上演することをポスターで知った。窓口で訊いてみると、席もあるとのこと。思い悩んだ末、ひとり10万リラ位の席をはり込んだ。イタ・オペは殆ど聴かない上に、ロベルト・デヴェリューというオペラは名前も知らなかったけれど、ここに来て観ずに帰ることは出来まい。チケットを手にして、安心して港の方へ下り、海沿いに歩く。夕食はやはり以前と同じメルジェッリーナ港のピツェリア「プリマヴェラ」と決めていた。港の桟橋では、明日カプリに行く船の時間を確認する。実は、カプリから先、船でエオリア諸島まで足を伸ばしてしまうと言う選択肢を考えたのだが、残念ながらその曜日に便があるのは夏ダイヤとなる翌週からであることが判明。このシチリアの北東に浮かぶ火山島を訪れることは不可能となった。最初の予定通り、カプリやソレント半島でゆっくりすることにした。
「プリマヴェラ」は昨年と同じようにテラスを広げていたが、まだ7時にもならず客は当然一人としていない。それ以前に店も準備中だ。何とか半時間をつぶし、ようやくひとつのテーブルに客が着く頃、我々も店に入った。前回取ったものと同じような注文になる。味は、2回目で感激の度合いが薄れたのか、以前ほど熱狂的なものではなかった。それでも、餅のように弾力と粘度のあるモツァレラにトマトとルッコラの味のハーモニーに酔いしれる。
それ程遅くはならず、ホテルまで歩いて帰った。明日からのカプリに備え、十分休息をとることにした。