スライゴーからドネガルへ

朝からいまいちの天気。一宿―飯の厚意にあずかったような有り難い気持ちで出発。コネマラ国立公園入り口を横に見てそのままウェストポートヘ。その後は道に迷い村道のような細い道をたどって湖へでた。ここからバリーナに行った方がいいだろう。今日はこのままスライゴかドネガルまで行きたい。バリーナの町は、日曜の午前中という事もあり閑散としてぃた。町を出たところでまたヒッチハイカーを乗せた。今度は地元の中学生くらいの女の子ふたり連れ。  「スライゴに行くときは海岸沿いと国道があるけど、国道で行くんだったら途中でおろしてくれればいいわ」と言う。別に急ぐでもなく海岸沿いの道というのを通っていくことにした。アイルランド・ナンバーなので地元の車だと思ったら変な東洋人の車に乗ることになってしまって最初は緊張していた様子だったがそのうち一人は眠ってしまった。海岸沿いと行っても海はほんのちらちらと見えるだけ。途中で町を過ぎたが二人は降りるそぶりを見せない。結局町からだいぶ離れた一軒家の前で車を停めさせて彼女らは降りていった。バスも走ってないようだし、買い物が出来るような町に出るにはヒッチハイクしか方法がないのだ。

暫く走ると国道に合流、更にアスローンの方からの国道が合流してスライゴの町に入った。一方通行が多くてぐるぐる町の中を回る。今日はこのまま進み、スライゴは帰りに寄ることにしよう。町を抜けてまた国道へ。途中でまた若いカップルのヒッテハイカーを拾う。  ドネガルまで。ドイツ人で、男は旧東独、女はフランクフルトの出身だという、素朴な感じのカップル。海岸沿いにいくつかの町を過ぎ、すこし大きめの町にはいる。いつの間にかドネガルに着いてしまっていたのだ。広場で二人を降ろし、駐車場を探す。結局町の人り口にあった旅行案内所の駐車場に入る。後ろの座席におもちゃのサングラスが忘れてある。あのドイツ人達が忘れたのだろう。もしかしたら町中で会うかも知れないと鞄に入れてぶらぶらする。果たして広場で案内所から出てきた彼らに会うが、自分たちのものじゃないという。乗り込んだときには置いてあったから君のだと思っていたよ、と言われた。先ほどの女の子達の忘れ物だったのか。戻ることも出来ないし、しょうがない。

案内所には宿を探す人が列をなしていた。リストだけ渡して後は各自に確認させればいいのに、二人しかいない所員が電話をかけてとりもっているので時間がかかる。これから訪れるドネガルなどのガイドを買おうと列に並んでみたが、待っていると半時間でもかかりそうなのであきらめて外へ出た。最初は大きいと思った町も、実は中心広場の回りに殆どの店やホテルが集まっていて少し歩くとすぐ町外れになってしまう。今日はドネガルも通過してしまおう。こんなに人があふれていてはホテルも―杯だろうし、まだ昼を過ぎたばかり。小雨もばらついてきた。

町を出て北上し、レタケニー方面へ向かう。ドネガルを越えると景色も荒涼としてくる。途中で地元のおばさんを乗せた。「レタケニーまで?」と訊くと、「そんな遠くじゃないよ」というばかり。英語で何か話しかけられるが分からない。何度も聞き返すと「私の英語じゃあわからんだろうねえ」と今度は余りしゃべらなくなってしまった。結局、おばさんは5分くらい走った先のガソリンスタンドで有り難うと言って降りた。

レタケニ一に近づくと道が良くなった。右に行くと英国領のデリーだ。左に行くとレタケニ一の町を通ってドネガル・コーストヘ続く。道沿いにツーリスト・インフォを見つけて入る。本格的に雨が降りだした。大混雑のドネガルの案内所と違って他に客は二人しかいない。これからイニシュオーウェンに向かうルートもあるのだが、やはリドネガル海岸でゆっくりしようとレタケニーを抜けて西へ向かうことにする。レタケニ一はドネガルよりも大いが、新しくてあまり雰囲気は無さそうな町だ。海岸線は入り組んでいて本当にコーストラインを通ると時間がかかる。天気も悪いので国道沿いに行くことにした。そろそろ宿のことも考え始めなければいけない。グレンヴェー国立公園にも入らずひたすら国道沿いに走る。

海抜752メートルのマウント・エリガルを右に見る。小雨がばらつき冷えてきた。次の町のダンガローで泊まろうと思う。アイルランドの道路標識は全部英語、ゲール語の2語表記だが、ゲルタハト(ゲール語使用地域)が多いドネガル地方では途中の村でついに英語表記が無くなり全てゲール語表記になっているところもあった。例えばCITY CENTREならAN LARという具合。そんな標識を見ると、いよいよゲールの地も最果てに来たという感じがする。また村のおばさんを隣村まで乗せる。サマースクールがあるのか中学生か高枝生くらいの子供違がたくさん集まっている村もある。所々で羊が道に出ていたり、何頭か列をなして歩いていたりする。

ダンガローは海沿いの村で一本の目抜き通りの両側にホテルが2軒あったが随分とひなびすぎた感じでパス。村を出ると大きな石が転がる原野を走る。北海道の日本海側を稚内から幌延とか小さな町沿いに走る感じだ。少しずつ日が陰ってきた。次はアルダラの町だ。ここはニット産業で有名でいくつかのブランドの工場もある。さっきのダンガローよりは大きいけれど、車の量が少し多くてあまり駐車が容易で無さそう。とりあえずパス。このあとはキリベグスになってしまい、はからずもドネガル地方を一回りしたことになる。アルダラを出ると反対車線には車が連なっている。みんな窓から身を乗り出したりして大騒ぎだ。村対抗のサッカー試合でもあって応援団が帰って行くところといった様子で、騒ぎ方を見ていると勝ったのはアルダラのチームのようだ。

アップダウンを繰り返してキリベグスに着く。ここでホテルを見つけないともうこのままドネガルに行くことになり、観光客で一杯のあの小さな町に泊まれるかどうかもわからない。港に面した町で―番大きそうな BAY VIEW HOTEL に入ると今日は一発でOKが出た。40ポンドだったがホテルの格からすれば激安といえる。大都市の4ッ星クラスといってもいい。部屋も広くてきれいだが窓の外は土手になっていてBAY VIEWとはいかないが賛沢は言うまい。

町をそぞろ歩くと町外れにはもっと眺めの良さそうなホテルがあった。しかもホテルのレストランは中華料理店だ。ここも良かったかと思っても後の祭り。せっかく漁港のある町に来たんだからシーフードを食べようと看板を出したレストランに行くと満員でかなり待つことになるようだ。あきらめて別の小さな食堂にする。最初に立ち寄ったパブと同じ建物で、どうも調理場も一緒らしい。こちらはうって変わって一人も客がいない。ギネスを欲みながらシーフードサラダを食べる。量はたっポリでスモークサーモンも寿司ネタのように大きくて厚い。量が多すぎて有難みが薄れるくらいだ。日本の安物のイタリアン・ドレッシングのようなものが味付けにかかっていてこれはよくない。道には人があふれていたのにこの食堂には結局誰も客が来なかった。なんだか季節外れの漁師町の大衆食堂で寂しく食べる夕食と言う感じになってきた。

満腹になってホテルに戻リガイドを見ながら予定を考える。途中で下が騒がしくなった。レストランでショウをやっているみたいだ。メアリーブラックの歌が聞こえたり、オールディーズを歌ったりしている。これが12時とまわっても終わらない。レストランは2フロア下だし、港向きの方だから随分離れている筈なのに低音だけでなく柏手までかなり響く。レストランの上の部屋だったら大変な騒音だったろう。結局2時近くになってショウが終了するまで寝付けなかった。まあお祭リシーズンに来ているのだから文句を言うほどでもない。