食物の為の5つの膳想曲
ホテル、レストラン訪問記
旅のアルバム
クロワ・ヴァルメールのジガロ海岸の松林の中に建つ。眼下に海を見渡すプールで飲むビールは最高。ホテル棟は多くのコンドミニアム風に分かれていて、それぞれが4~6部屋からなり、すべての部屋が階段状に海を望むテラスを持っている。コート・ダジュールのマジなリゾート・ホテルだ。確かに安くはないけれど、これが日本なら3倍は取られて当然だろう。
レストランはこの地方のリゾート・ホテルらしい開放的な内装。料理も味付け自体は地中海風であるが、薄味でオリーブ油も少なく、病院食といっても通じるほど独特の優しい味。ちょっとパンチに欠けると感じる人も多いかもしれない。しかし、私の場合、その日は風邪による下痢などで体調を崩し、普通のフランス料理ならパスしたいところだったが、結局すべて食すことができ、次の日には復活していた。癒やしの食卓と呼んだ。
ロックブリュン・キャップ・マルタンは国境の町マントンに近いリゾート村。超高級ビーチ・ホテルなどもある。海沿いの新市街を離れ、モナコ、ニースの方へと国道を戻り、途中で国道を外れ山の方へ登り道をたどると、ロックブリュンの旧市街だ。駐車場で車を止め、50メートルほど上る。旧市街と言っても小さな広場を囲んで古い家がいくつか建っているだけ。
この広場からの眺めの素晴らしさは有名なエズをも凌ぐほど。そしてこのホテル・レストランはその広場に面しているのだ。テラスは広場の縁の1/3ぐらいにあたっている。夏は日が長いので9時近くからゆっくり食事をとっても日沈はメインが来るころになる。食事が進み、テーブルにろうそくを灯す頃には、黒々と海に落ちていく山腹に星のように家々の明かりが瞬き、国道を行く自動車の光の列が赤く連なりながら、はるかモナコの町の光の中へと吸い込まれていく。予約をするなら、一番外側のテーブルをとりたい。
イタリアのレストランでよくやるように魚を一匹たのんで料理してもらう。シャンパンをあけ、サン・ピエール(的鯛)を食べた。国境を越えてイタリアからも景色目当てにやってくるようで、まるでカンヌの映画祭に呼ばれたような豪勢な金持ちグループが車を走らせて食事に来ていた。値段はしっかりコート・ダジュール価格だが、といって目の玉が飛び出るほどでもなく決して損した気分にはならない。何と言っても、テラスからの夜景は他に代えがたい。1996.8.訪問。
食事は贅沢して、ひとり500フラン、部屋はツインで500フランぐらい。 場所柄もあるので、設備などは他の地域なら300フランぐらいのレベルに相当。 つまり、割高ではあるが、その景色を堪能すれば納得できる。
ジュラ地方、アルボワの2つ星レストランでホテルも付いている。
アルボワはディジョンからそう遠くない。途中まで高速を走り、あとはスイスのローザンヌに向けて国道を走る。変わった形の瓶ですぐに区別できるジュラのワインの産地の中心。端から端まですぐに歩ける小さな町で、中心の広場からすぐのところにレストラン Jean Paul Jaunet は建っている。
ハーブを多用した独特の味付けで名高い。ここは2度訪れた。最初は、ハーブの驚きがあり、選んだものも偶然だったのかあっさりしたものだったので良い印象を持って再訪した。ところが、2回目はかなり健啖家向けのヘビーなフランス料理でちょっときつかった。アミューズ・グールを除いてハーブも控えめになっていた。好みと体調の問題だけれども、ちょっと ? な感じで残念だった。内装は古い建物をモダンにアレンジしていて、クリーンな広い空間でゆったりと食べられるのが良い。
最初の時に、記念にレストランのカードをもらおうと思って、「カルトを下さい」と頼んだら、ちょっと困った顔をしてしばらく奥でごそごそしてから、フルセットのカルト(品書き)を渡してくれた。今更、店の名前の入ったちいさなカードのことだと言うのも悪くて、恐縮しながらも持って帰ってきてしまった。
ホテルはよく整備されていて、落ち着きと親しみのある部屋。価格はツインで500フラン前後と非常にリーズナブル。
ホテルの並びにも、歩いてすぐの広場にもワイン屋さんが沢山あるので、地下のカーブを見せてもらったり、試飲させてもらったりして楽しもう。
フランシュ・コンテ地方、ドゥー県。スイスとの国境を流れるドゥー川に沿ったヴィレール・ル・ラックの町。ここから国境まではすぐだ。パスポートを忘れて、越えることは出来なかったが、時計の町ショー・ド・フォンも近い。
小さな町で、三叉路のところにホテルが建っている。ここのレストランは星一つ。ロジ・ド・フランスに入っているのでホテル自体は、一泊300フラン台(ツイン)と経済的。落ち着いてこざっぱりした田舎のホテルだ。まだ若いシェフががんばるレストランは、さすがに星が付いているだけあって内装のグレードも高い。訪れたのは5年前。まだフランス料理がよく分からなかった頃なので、いったい何を食べたのかすっかり記憶に無い。
ベッドがフランスでは珍しく、堅くてぐっすりと休めた。快い目覚めを待っていたのはすばらしい朝食。パンとジャムとバターだけが基本の朝食がほとんどだが、ここは充実していた。といっても大きなホテルのアメリカン・ブレックファーストとは違い、あくまでも「プティ・デジュネ」。サービスもとても良くて、近くの見所をたっぷり教えてもらった。
モンブランの麓に細く広がるシャモニーの町。ここで一番美味しい料理がでる星付きレストラン。併設のホテルも一級クラスで、部屋からはモンブランを臨むことが出来る。町の中心からも遠くないが、少し離れて建っているために静かだ。ホテルはシャレー風の木材を多用したもので、室内もアルプスの山の宿らしさを醸し出している。
レストランもスイス風というかアルプス風の内装。古くはイタリアのピエモンテ地方からこのあたりまでがサヴォワ公国の領地だった。料理も、海の幸山の幸が並んだのだろうか。もちろん、このクラスのレストランでは特に「山料理」というわけでもなく、さりげなく地方色を出しながら普遍的な美味に至ったもの。
パリあたりでは普通は安いものしか目にすることの無いサヴォワのワインも、地元で良質のものを飲むと素晴らしく、いろいろな味わいの違いがある。
リヨンからローヌ川沿いになんかすると、アルデシュ県の中心ヴァロンス Valence だ。そこから、西にそれてル・ピュイ方面に山に分け入ると、ラマストルという山間のまちにでる。町の中心から、D2をVernouxの方角へさらに登ると、ゆるやかな谷を見下ろす城が現れる。正面の広場のような庭と、一段低いところにプールがある。ロビーや応接室、客室全てアンティークの調度品が備えられている。とはいえ、アンティークを揃えたお城ホテルというだけなら、それほど珍しくもないので、ここの目玉はやはり、山間の静かな環境だろう。レストランは落ち着いた建物内部分と明るく少しモダンなテラスに分かれている。料理は伝統的なフランス料理で、それ程特筆する部分は無い。二人で食べて飲んで部屋代込みで1500フランだったので、それほどお値打ちではない。まあ、城に泊まってお値打ちもないか・・・ ホテルのマダムは、前の月に日本人のカップルが結婚式を挙げたという話をしてくれた。こんな山奥のお城に何十人という日本人がやってきたのだという。思い出深い式になったと思う。