食物の為の5つの膳想曲
ホテル、レストラン訪問記
旅のアルバム
パリからルーアンへ向かう高速A15。ペリフェリックを外れて、ブーローニュの森の下のトンネルを抜けるとセーヌ川を渡り、反対側のサン・クルーの住宅街をかすめながら川を左においてカーブしてまたトンネルに入る。マルリ・ル・ロワの森を抜けて長い下り坂をおりるとまたセーヌの流れが見える。高速は大部分セーヌから離れて通るので、流れを見るには国道N15をゆっくり走らねばならない。モネの家があるジヴェルニーは国道の対岸、そしてヴェルノン。更に大きな蛇行に沿って進めばレザンドリに着く。町の外側に小高い丘があり、その上にはガイヤール城という城跡が残っている。ここからのセーヌの眺めは素晴らしい。
レザンドリは平凡なノルマンディーの田舎町だが、ここにミシュラン1つ星のホテル・レストラン「ラ・シェーヌ・ドール」がある。町の中心からは少し離れているが、ふたつめの教会がある広場の前、セーヌ川のほとりというロケーションはゆっくりと食事をするのに最適である。レストランはこじんまりしており、華美ではない。川の流れに向けて大きく開けられたまどから光がふんだんにそそぎ込む。日の長い夏はディナーでも良いが、冬から春にかけてはランチが良い。
奇を衒わない、まっとうな料理。それでも、インスピレーションはしっかり感じられる。
サービスも落ち着いており、ゆったりと料理を楽しむことが出来る。
シェルブールという港町は、コタンタン半島の北端近くにある。ここからアイルランドまでフェリーが出ている。コタンタン半島の東側の付け根はカーンという大きな都市。そして西側はモン・サンミッシェルで、そこから更に西はブルターニュとなる。モン・サンミッシェルから半島を北上すると、途中にバルヌヴィル・カルトレという町がある。更に岬の方へ国道をそれるとカルトレという名の、高い建物が無く、漁船とヨットが同居する小さな港を持つ町に入る。いくつかの商店がある通りを進み、町を外れる手前にホテル・ラ・マリンがある。
少しわびしさを漂わせる北の海の町を訪れたのは初夏の休日。ほんの数時間前に電話で予約したばかりだが、海を眺めるテラスの付いた角部屋を充ててくれた。2面に窓があり、とても明るい部屋。窓を開け放つとまだ海の季節には早く、穏やかな光に満ちた優しい潮風で部屋が満たされる。1階にあるレストランは大きく開けられた窓から、たっぷりと海辺の光が入る。ベージュを主体にした内装も明るく落ち着いており、ゆっくりと魚料理を楽しめる。
このレストランはミシュラン一つ星だが価格も手ごろ。ノルマンディーというとバターたっぷり系を想像するが、意外にあっさりとした味付け。何より魚が新鮮なのが良い。ノルマンディーやブルターニュはワインがとれないので地酒を楽しむわけにはいかないが、ブルゴーニュでもボルドーでも、あるいはここから一番近いロワールなどの好みの白を選んで合わせればいい。
Sassetot le Mauconduitという変わった名前の村。
Sissiと言われた、後の皇妃エリーザベトが若き日、1875年にひと夏を過ごしたお城をがホテルになっている。小さなサセトの村はディエップとル・アーブルの間の海岸近く、但しこのあたりの海岸はエトレタに代表されるような浸食された断崖が連なっているので海辺の町ではない。町の中心近くに11ヘクタールの芝生に覆われた庭が広がり、その真ん中に静かにたつ18世紀の城。レストランの雰囲気はお城ホテルにふさわしいもので、味は標準的。特にインスピレーションがあるということもないが、ゆっくり楽しめるものだった。
ブルターニュ地方、コート・ダルモール県の花崗岩海岸の近く、トレブルダンのホテル・レストラン。 トレブルダンには、他にルレ・エ・シャトーの Manoir de Lan-Kerellec がある。そちらの方が格が高いようだが、部屋からの眺めはこちらの Ti al Lannec も負けてはいない。部屋はオーシャン・ビューと庭側とがあって価格は大きな開きがあるが、連続滞在でもなければ是非海側を選びたい。内装はピンクハウス系というか・・・ しかし調度品も趣があって安っぽい感じは一切無い。部屋から見下ろすトレブルダンの湾は西に面しており、海への落日をテラスから眺めることが出来る。レストランからの眺めも素晴らしく、Rの付く月ならお約束のシーフード、ブルターニュ産のカキやカニなどを前菜に、新鮮な魚をメインにしたディナーを楽しむ。
ブルターニュはここ数年フランス人の間でも人気が高まっている。海がメインの観光地だけれど、南仏のようにチャラチャラしていない。従って、人出も相対的に少ないしホテル、レストランなど観光にかかわる諸物価のコスト・パフォーマンスが良い。華やかな観光地のように金でサービスを買うようなことが少ないので、節約しながらでも不愉快な思いやみじめな思いをせずに楽しめる。
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