食物の為の5つの膳想曲
ホテル、レストラン訪問記
旅のアルバム
今は、あの Carré des Feuillants のアラン・デュトゥルニエ氏がパリで最初に作ったレストランで、現在奥さんのニコルさんが経営している小さな南西料理レストラン。シェフはジャック・フォーサという人。ドメニル広場からテーヌ通りを十数メートル入った所。小さいけれど、新装した室内は明るくモダンな雰囲気で気取るところが無い。テーブルの間には切りかけのバイヨンヌ・ハムが置かれていたりする。
南西料理というと、カスレとか鴨のコンフィとか、魚だったらルージェとか、結構定番のように出てくる。ここも、それらの料理が特に奇を衒うでもなく並んでいる。前菜には生フォワグラのソテで、ちょっと醤油味っぽいソースとともに芳醇。鴨は、特筆するほどでもなかったが、あまり重くならずに食べやすい。すこし分けてもらったカスレは、それほどヘヴィでは無かった。下のL'Ouletteで食べたカスレは半分しか食べられなかったくらい重かったけれど、こちらは比較的さらりとした味。
軽くすませようと、デセールはパスして、ヴェルヴェーヌ茶を飲んでおしまい。
場所柄は最初は変なところにあるなと思ったが、そのうちベルシーのスタジアムや公園が出来て、賑やかな場所になった。数年前にはフィガロ・ジャポンなどにもでかでかと載り、女の子達が大挙して押し掛けたようだ。その雑誌をカバンから取り出して料理の写真を指し、「これお願いします」と注文する人もいたという。
エントランスから少し廊下を通って食堂に向かう雰囲気が良い。明るいフローリング、いかにも女性雑誌に紹介されるべくして紹介されるモダンな内装。でも味は確かです。南西風(カスレなどがあったりする)でも、プロヴァンス風でも、地方色のパワーと現代風の軽さがバランスしている。安い165フランの定食でも、量は多くないが味は確実。勤めていた会社のフランス人社長のお気に入りだった店。食後のコーヒーが日本の喫茶店のように何種類もあるのが珍しい。
最後に行ったのは2年前、とても気合いが入った料理と応対だった。ベルシー公園に財務省までやってきて、千客万来の上り調子の頃だった。お店のカードも最初は名刺サイズだったのが葉書サイズになっていた。ところが、訪れたのがちょうど嵐の日で、更に交通ストが重なったかでお客さんが我々4人のほかには1卓しかいなくて閉店まで閑散としており、店の人が、いつもは満員なのですが、と弁解していた。
伝統的なフランス料理レストラン。フランスのエスタブリッシュメントな人々がさりげなく行くような場所。料理も古典的というか、まっとうなものではあるが、そんなにクリエイティヴではない。しかも、昨今、味まで低迷したのか、ゴーミヨー2001年では13点にまで落としている。価格に見合わない、ということらしい。150フランくらいのレストラン並みの点になりながらも、価格はひとり400フラン以上になる。窓際的レストランになってしまったのか。
長いドーメニル通りの終わりの方、ポルト・ドーメニルに程近いレストラン。日本人が来るとは思えないが、日本語の品書きがあるのはなぜか。200フラン弱と言う価格も手ごろ。味も悪くなかったのだが、ここ数年でゴーミヨーの点が下がってしまった。
ちょっと色モノというか・・・ リヨン駅の中の「本格的」レストラン。もちろん、ただの駅の食堂ではない。ベル・エポックの内装が「ウリ」。料理のクオリティもちゃんとしたレストランのもの。もちろん、場所が場所だけに、割高になる。旅程の中でフランス料理を楽しむ時間が無い時には重宝するだろう。
パストゥール通りに面したレストラン。ビストロという名前で、確かに内装はいわゆるレストランのものではない。しかし、ビストロのような、小さなテーブルが狭いフロアにぎっしりという感じではなく、白を基調にしたさっぱりとした内装。海の民芸調と言えなくもないが、古くさい感じでもなく、ちょっとオリジナルなものだ。
ムニュ・カルトは、ふたつのグループに分かれていて、トラディショナルなものとモダンなものという具合だが、トラディショナルといっても十分ヌーベル・キュイジーヌ。値段や店構えからは想像できないほどレベルの高い料理だ。ワインも手頃なものを揃えていて選ぶのに困らない。ここ2、3年、上り調子のレストランだと思う。ゴーミヨーでも15点を取っている。
(と言っていたら、2000年版ゴーミヨーでは13点へと一挙に2ポイントダウン。厳しい。しかし気軽に行けて味も保証付きというのは貴重なビストロ。)
メトロをパストゥールで降りて、モンパルナス方面に向かって左側の小道に入ると、角にあるのがこのレストラン。
200フランぐらいのレストランとは思えない、落ち着いてゆったりした内装で、グループで訪れても贅沢に楽しめる。200フランちょっとで、デギュスタシオンになる。行くといつでも、小さな黒板を持ってきてくれてデギュスタシオンの品々を一点、一点説明をしてくれるので、そればかり頼んでいるのだけれど、普通のムニュがあるのかどうか訊いたことは無かった。デギュスタシオンと言っても、6皿も7皿も出るわけではないので、少しおなかをすかしていけば大丈夫。まずは、アミューズ・グール(と言っても、食前酒のつまみの方ではなく、第2アミューズにあたる方)から、これからのドラマに期待を持たせてくれる。もっとも、ここでコケるレストランは滅多に無いのだけれど。
最初に行ったときは、大いに感動し、その後何度か訪れたけれど、時々ムラがあることも。もちろん、高いレベルのムラではあるが。デギュスタシオン全ての皿で高水準というのは本当に困難。落ち着けるし、サービスも良いし、お薦め。2、3年前に、16区の方にも姉妹店 Detourbe-Duret (23, rue Duret - 01 45 00 10 26) をオープンした。残念ながら、そちらには行く機会がなかった。とても人気があるので週末は満員で直前では予約が取れないことも多かった。
最近はゴーミヨーでも16点と高いレベルを維持。若きシェフ、シャバネルさんは、ピエール・ガニェールやヴィガト(アピシウスのシェフ)のもとで修行したひと。場所は地下鉄8号線の終点Balard から歩いてすぐ。ビストロのような小さな店構えだが、小さいながら落ち着くダイニング。以前から気になっていたが、99年の12月に訪れてみた。
今日のお薦めを頼むと、ア・ラ・カルト扱いになる。通常のアイテムはムニュ・カルトになっているようだ。アントレにサーモンのタルタル、プラにはルージェという組み合わせ。ワインはサンテステフにしてみた。昼にクスクスを食べていて、食欲万全とはいかなかったが、サーモンひとくちで完全にリセット。まっとうな、町の美味しいレストランの味。わかりやすいうまさと言うべきか。ルージェも量はたっぷり、赤い皮がこんがり焼け、ひきしまった身とともにまず感触がいい。変な小細工も無く、あっさりと美味しいものを美味しそうに出すレストラン。デセールはフルーツ・サラダでさっぱりと。
時期も時期だけに8時半頃には満席。開店30分前に入れた我々のリザーブが最後の一卓だったようだ。
それまでジョエル・ロビュションのレストラン・ジャマンが入っていた場所に、ロビュションのリタイア後、アラン・デュカスが居を定めたちまちのうちに3つ星をとった。ヴィクトル・ユゴー広場とトロカデロ広場を結ぶレイモン・ポワンカレ通り55番地。そして、再び場所を移していった。今度はモンテーニュ通り、プラザ・アテネの中に。プラザ・アテネというと、メイン・ダイニングは、あのレジャンス。既に、レジャンスはもう消えてしまった。新しいレストランの名前は、Alain Ducasse au Plaza Athenee。
私たちが訪れたのは、ポワンカレ通りの時。古い図書館のような本に囲まれたインテリアの下で、新しい創造物のような、まるで直接脳神経を刺激するような不思議な食べ物を食べる。美味しいとか不味いとかというカテゴリーの出来事ではない。食べ手のイマジネーションをどこまで飛翔させられるか、というイヴェント。食事のために、ひとり1500フランというのは、フランスでは最高額の部類だが、この体験は一度はしておく価値があると思った。変なセミナーとかに参加するより遥かに自分を見つめられる? 飲んだワインはコルシカの白。百科事典のような分厚いワインリストから、出鱈目で選び出したものだが、まろやかに熟成した重くならない、あまり料理を選ばないワインだった。
A
日本人シェフ、Tetsu Goya さんの店。17区でも北の方なのでちょっと庶民的になる界隈。とても長いカルディネ通りの108番地。メトロだと3号線 Malesherbes マルゼルブで降りて5分くらい歩く。
自分が行ったのは随分前のことで、殆ど忘れてしまった。小さな店で、照明を落とした古い感じの内装。出張者や友人が来て自分がアテンド出来ないときによく薦めてあげて、みんな満足していたし、ゴー・ミヨーでも安定した評価だから、その後もずっとレベルをキープしているのだろう。別に日本人向けに意識しているわけではないけれど、日本語品書きもあるし、予約も日本語で可(奥さんが店にいらっしゃれば)。
シーフード、魚料理のレストラン。17区は結構、高級レストラン激戦区で、アピシウス、アンフィクレス、ギ・サヴォワ、ミシェル・ロスタンが歩き回れる距離にある。ペトリュスの面しているマレシャル・ジュアン広場からヴィリエ通りを少し行くとアピシウスだ。オペラからメトロ3号線で Pereire 下車。 凱旋門からでも徒歩15分強で歩けない距離ではない。
季節には、店の外に沢山のカキをならべて大皿に盛っている。ブラッスリー風に「海の幸盛り」を頼むこともできるけれどかなり高くつく。カキ6個くらいを前菜に、魚料理のメインというのが標準的か。観光客向けの宣伝をしていないので日本人のお客さんは見たことがないけれど、ここは十分美味しい。ゴー・ミヨーでもずっと15点だったのに'99年は14点になっていたのはどうしたのか。仕事関係で行ったことが多いが、たまにプライヴェートでも。250フランの定食でも悪くはない。さすがに白ワインのリストは充実。さして広くない店内だが、ヴィリエ通りに面した方は全部ガラスで、内装も清潔感があって明るい。サーヴィスもしっかりしているが堅苦しさがない。犬は連れ込みOKのようで、店自身が犬を飼っていて時々歩き回っているから、犬がだめな人やレストランに犬はけしからんと思う人は行ってはならない。ヴォワチュリエもいるので、車で乗り付けても駐車場の心配をしなくてすむ。
よりによって、19区なんかにある。ビュット・ショーモン公園の端からすぐの所で、まああまり「良い場所」では無い。車で行き帰りするのが無難。
ここは、日本のマスコミでもよく取り上げられるし、パリでも'96年の開店以来話題の店だ。才気溢れるシェフは'97年のゴー・ミヨーの「明日を担う若手シェフ」に輝いた。ビストロ風だけれど、伝統的と言うよりモダンな店内。最初に行ったときは、まだ早く7時半を回ったばかりでシェフのフレション氏が店のフロアで生ハムを切っているところだった。前菜の前にその生ハムを食べたが、請求されたらサービスじゃなくて料金を取られていた。うまかったので許す。全てのアイテムにキラリと光るものがある。2度目もやはりレベルは高かった。'99年はゴー・ミヨーで1点落としたものの15点というのは、パリのこのクラスの店ではピカ一。但し、話題の割に小さな店でキャパが多くないので、予約を取るのは大変。10時以降は大丈夫とか、そう言うことも多い。