食物の為の5つの膳想曲
ホテル、レストラン訪問記
旅のアルバム
アラン・デュトゥルニエ氏の、南西地方の味わいをベースに素晴らしいレベルに高められた創造的な料理を味わうレストラン。一人800フラン以上にはなってしまうが、どう転がっても満足できる。超高級レストランではあるが、重苦しい感じは一切無く、洒脱で明るい雰囲気。インスピレーションが自由に羽ばたくような料理。大切な時に行きたい場所。
シャトレでメトロを降り、リヴォリ通りの出口から出たら、ZARAのある角からブルドネ通りを進むと右側。ポルトガル料理の店として有名。魚介類を使った様々な料理とポルトガルのワイン。ランチのムニュは129フランとリーズナブルだが、ア・ラ・カルトで頼むと高くなるかもしれない。
3区はあまり高級レストランというのは無い。ヴォージュ広場に面したアンブロワジーは4区になる。ポンピドー・センターの近くの、この「オーヴェルニュの大使館」は、その名の通りオーヴェルニュの田舎料理。内装も完全に民芸調なので、初めて本場の「フランス料理」を食べようとする人を連れて行くところではないかもしれない。実は、パリに行って間もない頃、よく分からずに初めての人を連れて行ったのだった。しかし、普通のフランスめしはまあ食べたという人はこのような地方料理もお薦め。このような料理は、クレルモン・フェランから更に山に分け入ったカンタル県あたりにいかなければ出てこない。品書きを見て分からないときは、どんなものか訊いた方がいい。わからずにチャレンジすると驚くようなものが出てきて、人によってはさっぱり食べられない可能性もある。内臓まるごととか。ポテトと地元カンタル・チーズを捏ねてお餅のようにしたアリゴという名前の付け合せが特徴。
セーヴル・バビロンからボン・マルシェの方へ歩き、コンラン・ショップを通り過ぎた区画にある。こじんまりとしたフロアだが、ビストロのように詰め込んでいないので、狭い感じはなく、ぴったりと落ち着ける微妙な空間。シンプルな暖色系の壁も洒落ている。奥にもいくつかテーブルがあり、小さなパーティーなども出来そう。日曜が休みだが、土曜日の夜は開いているので週末の夕食にもってこい。
190フランのムニュにしてみた。300フランだと、メインが魚と肉と両方になる。ア・ラ・カルトではメイン1品で350くらいになろう。まずはロケットとパルメザン・チーズのサラダ。結局、ルッコラとパルメッジャーノ・レッジャーノというわけで、イタめしと言った方がよい。新鮮で緑の味が広がる。メインは、ポークを取った(3種類からのセレクション)。ややソリッドなフィレが、絶妙にこんがりとローストされていてさっぱりと食べられる。前日ドイツで食べた、シュヴァイネハクセとは同じ豚でも全く違う文化の食べ物。ワインはコルビエールの赤にしたのだが、タンニンもきつくないし、ポークやチキンにも合わないことはない。しかし、このレストラン最大の衝撃は、デセール。私のパイナップル・スープとジンジャーのアイスクリームは、一見パステル調だが、実はかなり妖艶な味。友人のとったガトー・ショコラは、粘度の高いチョコレートが脳髄に抜けるような深みのある刺激を与える。これまでフランスで食べたデセールの中でも5本の指に入る出来。(一番は、ポーヤックのコルディアン・バージュの苺ゼリー。これは変わらない。)
2001年のゴーミヨーで1点上がって15点。アクセスも便利だし、旅行のときもお薦め。ところが07年では記載無し。どうしたことだろう。
日本のテレビでも有名なアラン・パッサー氏の超高級レストラン。ディナーをとれば、酒込みでひとり1000フランは超える。お昼のムニュが390フランと格安だが、土日がフルに休みなので、平日のみ。
超高級レストランと言っても、レザンバサドールやランブロワジーに代表される内装までコテコテに超高級な系統もあるが、こちらはモダンであっさり、あくまで味とサービスで勝負。マスコミ受けしているだけだとか、出来不出来のムラが結構あるとか、色々に言われるものの、たった一度お昼に訪れた時は、うならされるものだった。だいぶ前になるので何を食べたかすっかり忘れたけれど、拍子抜けするくらいあっさりとしたものだったが、インスピレーションが感じられるもの。アミューズ・グールの卵だけは良く憶えている。ワイン・リストも大変。訳がわからんので、大穴を狙ってコルビエールだったかを頼んだ。結構珍しいと思ったのだが、その後、メゾン・ラフィットのヴィエイユ・フォンテーヌで同じものを3割安く出していた。(ミレジメまでは忘れたけど) 給仕の人数も半端では無く、客より給仕が多いのではと言うくらいだが、空気のように、すっ、ささっ、とサービスしてくれる。
ロダン美術館やアンヴァリッドからも近くて観光でお昼に行くのも一興。但し、ちゃんとした格好で行かなければならないので、夏の観光中には厳しいか。まずは予約を取るのが大変だろうけれど。
メトロだと、エコール・ミリテールで降りてブルドネ通りを少し歩いたところにある、ブルドネというホテルのダイニング。ホテルは60室弱の小さなホテルだが700フラン程度と価格も手ごろで短期の個人旅行にもぴったり。プチ・ホテルのダイニングと馬鹿にしてはいけない。ミシュランの星ひとつ付き、ゴーミヨーでもずっと17点をキープしている。当然、雰囲気もハイレベルだが、堅苦しいところは皆無で落ち着いて食事が出来る。
何故か日本語の品書きもあり、誰かを連れて行くのにも良い。480フランだと、ムニュ・デギュスタシオンになると思われるが、食欲があるときは前菜もプラも2、3種類シリアルに味わえるのでお薦め。
2007年ゴーミヨーでは記載無し。ホテルのほうはWebサイトもあるのだが、レストランについて記されていない。どうなっているのだろうか。
一般ピープルの行く所ではない・・・が、一度は紛れ込んでみるのも、長い人生の中ではひとつの貴重な経験と言おうか。ホテル・クリヨンのダイニングであり、まるでヴェルサイユ宮殿の中で食事をするようなもの。ネクタイ無しでは予約が入っていても入場させてくれない。食事中にまかり間違ってジャケットを脱ごうというようなそぶりでも見せれば、風のように人が飛んできて目で制止してくれる。迎賓館みたいなものだから当然。味は、ホテルの食事をそのまま超ハイグレードにしたようなもので、万人受けするポピュラーな味の最高峰。ということは、これという個性が無いということになるのでは? 値段は馬鹿みたいに高いわけではない。2001年ゴーミヨーでは16点にまで下がってしまったが。
現在は、シェフも若返って非常に意欲的な料理を提案しているようである。
ピエール・ガニェールがサンテティエンヌの店を閉めた96年頃は、まだフランスの景気も低迷していた。そして、パリに移り、バルザック・ホテルのダイニングとして再開。首都に住む忙しい美食家達は喜んだに違いない。ゴーミヨー19点、ミシュラン3つ星と、最高ランクに至った。モダンで明るい内装。テーブルによってはひっそりとふたりで食事が取れるようになっている。ムニュ・デギュスタシオンに挑戦してみた。デセールだけで4種類も出てくるというものなので、余程の大食らいでなければならない。料理は、繊細そのもの。材料こそ違うが、まるで精進料理のような薄味の皿もある。体調によっては、パンチが無い、ぼおっとした味に感じてしまいかねない。訪れた日は、昼からステーキなんぞを食べていたので、ちょっと残念なことに。これは食べる時と人を選ぶ料理かも知れない。
アラン・デュカスが始めた、話題の無国籍料理レストラン。忽ちのうちに、ロンドンと東京でも開店。ゴーミヨーでも15点を取っている。大いに期待をしていったのだが、そこで我々が見たものは・・・ シャンゼリゼからマリニャン通りを入って、程なく左側に現れる。あっさりした外観なので見過ごしそうだ。中はさすがにモダンな内装。夜はアラカルトだけ。カルトにはフランス人でも首を傾げるようなシュールな名前の食べ物が続く。ソースや付け合わせの組み合わせを変えられるようになっていたりして、システムを説明してもらわねばならない。ワイン・リストもフランスものよりカリフォルニア・ワインの方が種類が多いくらいであり、世界各地のワインを集めている。
さて、我々の突き出しはポティロンを使ったもので、まあよくあるタイプだが、ちょっとアジアン・テースト。前菜は、ペルー風刺身? とか キノコの生えた豆腐どんぶりとか? 「変わってるけど、味はなかなかいけますよ」というのが大方の反応。そしてメイン。「美味い。けど、これはよくある、アジア風炒め物では??」「これも、結局スペア・リブだぜ。まずくはないけど。」「ただのパスタやん・・・」という具合。そして、デセール。アーモンド入りシガーにクリームを付けて食べるだけ、とか、私の前のは、容器こそ変わっているがフルーツ・カクテルそのもの。名前だけは現代音楽の曲のタイトルのようだったが。そして、究極は、同席のフランス人がとったスプーン風ドーナツ。スプーン風かも知れないが、それより前にドーナツである。写真を撮ってきたけれど、そのまま載せると営業妨害になるかも知れないからやめておきましょう。
これって、鰯の頭も信心から、ってやつか? 確かに美味しい。ひとり300フラン以上という値段は高すぎるかも知れないが、サービスの質(まるでジョスパン政権の雇用対策の一環かと思うくらいたくさんのボーイたちがいる。レベルも高い。)、素材、料理の独創性(但し、一部、名前にだけその独創性が発揮されていると思われることもある)、そして話題性を考慮すれば、こんなもんかいな、とも思える。日本人も我々含めて4卓ほど。ギョーカイかアート関係のような独特のオーラを発散させたグループも。それ以外は、スノビッシュな態のフランス人。目的次第では利用価値大。しかし、食べることを、あまりにもメタレベルで捉えすぎているのではないか。メタ・ガストロノミーだなんて。
それでも、一度は行ってみるのも悪くない。その後は、趣味、または必要に応じて・・・
イロモノかと思いきや、ちゃんと続いているようです。
宮城の勝山酒造が経営するレストラン。キュイジーヌ・フランコ・ジャポネーズ。日本でもヴィーナス・フォートに支店がある。Spoonが近くに出来て、競合するのかと思ったが、Spoonのコンセプトは全く違うモノだった。
現在、この場所は Ginger という汎アジア的エスニック・レストランになっている模様。