おいしい思い出

黄色い表紙のゴーミヨーは、ミシュランとならぶフランスのホテル・レストラン・ガイド。始めた人ふたり、すなわち Henri Gault と Christian Millau の苗字を取っています。ミシュランが、コメントを排して星やスプーンの数でディジタルに評価しているのに比べて、ゴーミヨーは饒舌というか、文章でタップリ説明してくれます。フィルターやバイアスはミシュランのほうが少ない気がしますが、自分なりにそのクセを把握すると実に使えるガイドになります。点数は20点満点でだいたい11点ぐらいから掲載されます。20点というのは、フランスの学校の成績のつけ方か何かだったはず。93年くらいからほぼ毎年買って読んでいますが、点数の動きがかなりあります。ミシュランの星の数に比べれば1点の動きの重さは違いますが、この動きが結構参考になります。気合が入った上り調子のところ、マンネリに陥っているところなど。逆に自分が行って、いいなと思ったところが次の年に点を落としていると残念だったりしますが。従来は常に前年版と比較しながら動きを追っていたのですが、2001年版から、前年比で変動があったところは上向き、下向きの矢印が表示されるようになっていました。これは、シビア。長年、最高は19.5点でしたが98年だったか、引き締め策がとられて19点満点に。ところが、マルク・ヴェイラが20点を取り、現在はヴェイラのふたつのレストラン(La Ferme de Mon Père、La Maison de Marc Veyrat)にこの満点が与えられています。17点以上だと、ミシュランの星2つ以上に相当、という感じでしょうか。14点以上になると1点、1点の違いは、味の違いと言うより、創造性だとか、インスピレーションだとか言った領域の違いになるような気がします。

2007年はフランス全国で11のレストランが19点を獲得。 オリヴィエ・ロランジェ、ミシェル・ゲラール、ミシェル・ブラ、アンフィトリオン、アルページュ、ピエール・ガニェール、アラン・デュカス(プラザ・アテネ)、アストランス、ギ・サヴォワ、コルディヤン・バージュ、トロワグロといったこれ以上は無い一流どころ。アルページュやガニェールも年によっては点を落としたこともありました。またアラン・デュカスのように店を移した時(プラザ・アテネに移った時など)や、シェフが変わった時は一旦評価保留になります。

ゴーミヨー出版社では、同じ名前の雑誌も出しています。 隔月刊で、ガストロノミーや旅行の話題が豊富です。

ミシュランといい、ゴーミヨーといい、このような信頼性と実用性を兼ね備えたグルメ・ガイドが成立するというのは、そういうジャーナリズムがあるということだけではなく、フランスのレストランの品質管理がきちんとしていることを示していると思います。偏見かもしれませんが、裏を返すと、フランスではB級グルメが成立しないと言うことも出来ます。フラリと入った何でもない店の何でもない料理が実に美味しかった、なんていうことが非常に少ない。イタリアやスペインはB級グルメが立派に成立するのですが。逆に、ガイドはあまりあてにならなかったような気がします。