食物の為の5つの膳想曲
ホテル、レストラン訪問記
旅のアルバム
パリで一人暮らしをしている頃、FAQのひとつに「食事はどうしているのか」というものがあった。しかし、食事などと言うものは別に山の中やジャングルの奥地に住んでいるのでない限り、その人なりにどうにかなっていると思うのだが。それでも、適当に答えないといけないので、相手に応じて、「中華とかラーメン屋」「時々ご飯を炊いて」「食材は豊富ですから」などと言っていた。その答えのレパートリーに「冷凍食品が沢山あるのでよく食べています」というのがあった。もちろん、そう言われて多少は興味を持つ人向けの答えではある。さもないと、憐憫の情のこもった顔で見られてしまうこともある。
フランスの冷凍食品はかなり発達していて、決して手抜きのためのそれなりのもの、という域を超えている。まず、冷凍食品専門の全国チェーン店があり、パリ市内及び近郊なら街角からショッピングセンターまでどこにでも店を出している。日本のコンビニぐらいの面積が全て冷凍食品で埋まっている。一番目にするのがPICARDというチェーンだが、その他にもVIK(ヴァイキング)とかがある。大型スーパーの冷凍食品コーナーも太刀打ち出来ない品揃えで、野菜から肉、魚まで素材から、料理したもの、デザートまで揃っているのだ。注目すべきは、半完成のもので、パイ皮を使った料理はちゃんとオーブンで料理するようになっている。ムサカなども結構いけるが、これもオーブン使用だ。パエリャも下手なスペイン料理屋よりうまい。デザートでも各種パイ、タルト、自分で中身を入れるタルト台だけのものまで。つまり、一通りのものは全て揃うのである。エスニック・シリーズもあってカレーも何種類か。但し、カレーに関しては、マークス・アンド・スペンサーの方が本格派なのはイギリス系だからしょうがない。ちなみにカレーは電子レンジで良い。
日本のコンビニで、あるいは冷凍食品で日本の味はわからないかも知れないが、フランスの冷凍食品では、いちおうフランスの味の片鱗が味わえると思う。但し、レンジやオーブンが必要なので、キッチン付きのアパートメント・ホテルに泊まらないと体験するのは難しい。もっとも、旅行で短期滞在ならレストランに行くのが一番。